Neural Group ニューラルグループ株式会社

 

東京大学博士 理論物理から
AIサービス開発者へ
CTO 見上敬洋に聞く
 “AIは裏方。
エンドユーザーに届く
サービス事業者でありたい。” CTO 見上 敬洋

当社CTO見上敬洋は、東京大学理学部物理学科をトップ成績で卒業(*注)。
博士課程では、物性理論の分野で博士号を取得。2023年2月に当社CTOに就任。
学生時代から数学が好きで理論的な美しさを追求したかったという見上が、NEURALでAIの開発に携わるようになったきっかけはなんだったのでしょうか。
(*) 注:学部4年間の平均素点が90以上の「極めて優秀な成果を修めた」として評価された。参考:東京大学における評点

見上:博士課程では、
理論物理の物性理論という分野で博士号を取得しました。
この分野は量子論という、原子ほどのミクロな世界を支配する物理法則を用いて、
身近な物質の性質を解き明かそうとするものです。当時から数学が好きで理論的な
美しさを追求したいという欲求が強かったのですが、
一方で何かしら実社会に役立つ成果を出したいという思いもありました。

博士号の研究分野は、そういった思考を経て選んでおり、
研究を通じてビジネス的な視点を養えたと思います。
大規模なシミュレーションの自作など、
システム構築やアルゴリズムについての知識も身につけました。

博士論文を書きながら、実社会で役立つものに貢献したいという思いが強くあり、
結局世の中に直接役立つものを生み出したい、
との想いからアカデミアから離れることにしました。実社会のことを知るため、
一旦社会に出てみようと思い、
システム開発やリサーチの実務経験を活かせるということから
野村総研に入社しました。

見上は野村総研に入社後、2020年まで同社に勤務。
そこで出会った深層学習の技術が、理論物理の数学との共通点が多く、すぐにキャッチアップできたといいます。

見上:野村総研には5年ほど在籍しました。研究開発系の部署に所属し、システム開発をモダン化するための技術調査やフロントローディング、
そして実際にお客様へのシステム導入支援などを行いました。いろいろなプロジェクトを経験し、
技術的にもビジネスマンとしても成長することができ、非常に実りある5年間でした。

システム開発についてはよく理解し実践できるスキルが得られた一方で、そのスキルを生かして単なるクライアントの支援ではなく、
大袈裟に言うと人々の生活に大きなインパクトを残せるようなサービスを自ら創り出してみたい、という思いも強くなる一方で、
大企業にいる分アクションを起こしにくいと感じることもありました。

そんな思いを持っているなか、深層学習という、当時の私には畑違いだった技術に触れる機会を社内ワークショップでいただきました。
ResNet のような画像認識モデルや、当時流行っていたLSTMのような自然言語モデルをの考え方を理解し、実装するのが楽しく、
気づいたらワークショップコンペで優勝するくらいには夢中に取り組んでいました。
理論物理の研究での線形代数や解析学の素養が、テンソル演算や誤差逆伝播などの深層学習で用いられる数学的な要素と相性が良く、
肌にあったというか、すぐ吸収できたのが大きかったのかなと思います。

その時、深層学習というまだ新しかった技術がユーザーに革新的で大きなインパクトを与えられるということを強く実感しました。

サンフランシスコ赴任を経験し、
シリコンバレーでサービス開発をした経験が
見上にとって大きな転機となりました。

見上:社内制度を利用し、アメリカへ海外赴任する機会をいただきました。
現地でニーズ調査をし、ゼロから新商品開発と、
社内でスタートアップ企業を立ち上げるというプロジェクトです。
サンフランシスコは治安が芳しくなく、置き引きが多発したりするような環境で、
日本人視点で見たときに安心できないなと身にしみて感じていました。
その時、カフェなどの施設内を安心して過ごせる環境にするためには
どうしたら良いのか、お互いがお互いの荷物を見守るプラットフォームを通じて、
良いコミュニティを形成できるのではないかと発想しました。
実際に、サンフランシスコ現地の方にインタビューをし、
それをもとにプロトタイプを作成、ユーザーからフィードバックをもらい、
ブラッシュアップするというプロセスを経て、新規サービスを開発し、
現地の投資家向けにピッチトークしました。

こういった経験が、開発者目線ではなく、
エンドユーザー目線でどのような価値を生むかを
深く考える良い機会になったと思います。
この経験は、現在のNEURALでの開発にも直接役立っています。

その後、研究開発系の部署に従事していた際、
NEURAL前CTOの佐々木に声をかけていただきました。
佐々木は実は東大物理の同級生で技術者としての
バックグラウンドは重なる部分も多いです。
ニューラルでは、最新のAI技術を積極的に利用し付加価値の高い
サービス開発をしており、単に顧客サポートではなく
自分で新しいサービス創造に貢献出来る点が非常に魅力的だと感じました。
自身のビジネス感覚も活かせると感じ、NEURALに入社することを決めました。

その後見上は、AIベンチャーのNEURALに参画します。
ニューラルで印象的だった業務はありますか。
また、サービス開発を行う際に
役立てていることを教えてください。

見上:『リモデスク』というソリューションの開発が最も印象深いです。
入社直後ということで、「エッジでAIを動作させる」ことを
実践できたとても有意義なプロジェクトでした。
ハードウェア性能の制約の中でも安定動作させるための最適化設計を
常に考えながら、サービスのローンチまで圧倒的なスピード感をもって
開発できたという点でとても充実感を感じました。

リモデスクというサービスは、ユーザのWebブラウザでAIモデルを動作させ、
顔特徴量の抽出や、スマホ等の物体検出を一定の推論速度で行う必要があります。
ユーザのPCは高いスペックを期待できず、
限られたCPU容量しか積まれないPC端末でそのような機能要件を満たすためには、
Webブラウザ向けにモデルを最適化し、モデル自体のサイズを減らし、
ユーザの操作感向上のためにWorkerスレッドを分離するなど、
モデルの精度だけでなく様々な観点での工夫が必要でした。
また、エンドユーザーのハードウェア状況に応じて最適な処理系に
切り替えるといった設計上の工夫も行いました。

こういった、実践的な課題に対し真正面から対応していくことでAIを使って
サービスを構築し、結果的にお客様に利用されるサービスを提供できたことが
とても嬉しかったです。開発から初版リリースまでは半年程でした。
NEURALでは最初にプロトタイプ作り、そこを出発点にしながら、
本番環境で使用できるようにサービスを作り込んでいくという
アプローチを取ることが多いです。フィジビリティ検証を短期間で行い、
商用開発では社内の共通ライブラリやノウハウを生かして高品質なものを
高速に組み上げるというスタイルで、ビジネスと技術の両面でレベルの高い
サービスを素早く提供するのが、ニューラルのスタイルであり強みかなと
思っています。

NEURAL参画以降、様々なAIサービスを開発してきた見上。
このようなシステム開発には良好なチームワークも重要になってくると語ります。
ニューラルの技術開発組織の強みや魅力はどのようなところなのでしょうか。

見上:NEURALのエンジニアは、全員が何かしらのスパイクを持ち、
それを核としてお互いを尊敬できる関係ができている点が、根本的な強みと考えられます。

採用基準としてハードスキルのみでの評価は行っておらず、論理的思考能力を試すようなコーディング試験、
そして課題解決の議論が出来るかを試すホワイトボード試験や、面接時にコミュニケーション能力を見ることで、
ソフトスキルも重視したハードルの高い採用を行っています。

狙いは、入社してから他者と協力しながら自身のエンジニアとしての成長にも前向きに取り組めるような
素地の有るメンバーを集めることです。NEURALではチーム開発が基本になるので、その中で輝ける人材なのかを、
思考力、構想能力、他者に対する理解力や他者への伝達能力に重きを置きながら、見極めるようにしています。
単に現在のスキルのみで判断するということはありません。
個人それぞれが強みを持ち、互いが尊敬し合える関係ができ、
チームを組んだ時にチームとしてのアウトプットを最大化できるような方を求めています。

そういった狙いも功を奏し、基礎能力が高く、カルチャーフィットしたメンバーが集まっていると感じています。
このあたりの考え方は、以前AWSウェビナーに登壇した際の映像が公開されております。

動画:ニューラルの成長を支えるマインドセットとスキルセット

現在のニューラルのエンジニアは、少数精鋭ですがチームワーク抜群の素晴らしいメンバーだなと常に感じており、
私自身もいちエンジニアとして楽しく開発に当たれているのが幸せに感じます。
このような、頼れるメンバーと楽しく、いいプロダクトを作ることに集中出来る組織、
というのがニューラルの一番の魅力かなと思っています。

最後に、NEURALのCTOとしてどのような未来を目指していきたいですか。

見上:AIについての技術の進展速度は凄まじく、広がりも多岐にわたります。
そういった技術の中には、一過性の流行りものから、質的に社会を変革させるものまで様々です。
いずれにしても言えることは、どんな技術を使おうと、エンドユーザの心に届かなければ意味がありません。
単にお客様から依頼があったから作る、流行ってるからやってみる、というような、
会社のビジョンやミッションに合わない仕事はニューラルらしくないと思っています。
AIは手段であって目的ではないので、自分が開発したAIサービスが安心・安全に使用できるものか、
また実際のスマートシティにおいて地域に住んでいる方々に貢献できるかを重要視しています。

CTOとしては、冷静に技術の有用性や将来性を見極め、
当社らしい付加価値の高いサービスとしてエンドユーザに届けることが出来るかどうか。を
常に大事にしたいと思っています。
技術のキャッチアップをしながら自分の尺度や組織としてコアとなる考えをもち、
それに対して冷静に判断することが大切だと思っています。
CTOの立場ではありますが、技術が好きな一人のエンジニアとして欲深く様々なアイデアを生み出し、
チーム一丸となって、革新的で心踊るAIサービスを一つでも多く創出していきたいと考えています。

究極的に欲しい人材は、優秀なメンバーで構成された精鋭チームも牽引できる強いリーダーシップをもつ人材です。
そのためには、少なくともひとつ以上の技術領域でスパイクを持つことが重要と考えています。
そのスパイクを軸としてチームに当人しか出せない価値をもたらすことで、人望も自然と生まれます。
現に過去に参画してくれた海外のエンジニアも「マネジメントはやりません」と言って入社しましたが、
技術1本槍でいつの間にかリーダーに育ち、活躍の幅を広げています。

ニューラルのメンバーは技術に対してとにかく貪欲な人たちです。
データサイエンスの専門家、AIの研究者や、世界的ホワイトハッカーなど独自のドメイン知識を掘り下げてきた人が
お互いに学び合っています。
CTOという立場に関係なく、私もとても刺激的で日々学ぶことも多いです。
共に楽しみ、グローバルな環境で戦いたいと考えている方は、ぜひNEURALにご参画ください。